日本生態学会, 第47回大会 (2000), 広島大学

アミメアリのご近所どうしは仲が悪い? I. 敵対性強度の違いと巣間距離

真田幸代1・横山実香1・廣田忠雄1・長谷川英祐2・辻和希3・佐藤俊幸1・小原嘉明1

1東京農工大・獣医学科・動物行動学, 2北大院・生物生態体系, 3富山大・理・生物

概要:

 真社会性昆虫のワーカーは、同じコロニーの個体と他コロニーの個体を識別し、他コロニーの個体に対して激しい敵対性を示すことが知られている。最近の研究から。アリやシロアリの幾つかの種では、他コロニーに対する敵対行動でも、激しく敵対する場合と、殆ど敵対しない場合があり、この敵対性強度と違いが巣間の距離に関係していることが示されている。しかし、遠い場所にいるコロニー同士ほど敵対性強度が強いという関係がみられた一方で、全く逆の関係がみられる種もいる、また、これらの研究では、敵対性に大きな影響を及ぼすと考えられるコロニー間の血縁関係について検討されておらず、巣間距離と敵対行動が実際にどのような関係にあるのかはまだ明らかではない。

 本研究では、落ち葉や倒木の下などの巣場所を数カ月ごとに移動するアミメアリ(Pristomyrmex pungens)を用いて、他コロニーに対する敵対性の強さに違いがあるのか、その違いが巣間距離や血縁関係に影響されているのか検討した。

 巣間距離と敵対性強度の関係を明らかにするため、まず野外で10コロニーの巣場所を地図上に記録した後に、ワーカーを採集してコロニーごとに室内で飼育した。1週間後に、2つのコロニーから1個体づつ選び、プラスチック容器に移して敵対行動を観察した。10コロニーを総当たりで対戦させた結果(45組)、敵対性を全く示さない場合から、激しく噛みつき合う場合まで、敵対強度は様々だった。この敵対強度は、コロニー間の距離と有意に負の相関がみられた。

 次に、コロニー間の血縁関係をRAPDマーカーで推定した結果、血縁度は敵対強度にもコロニー間距離にも、有意な関係がみられなかった。

 以上の結果から、隣接コロニーに対して敵対行動が発達する生態学的要因について考察する。

キーワード:昆虫, 膜翅目, 蟻, フタフシアリ亜科, 進化, 生態

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