日本動物行動学会, 第21回大会 (2002), 立教大学

続ミツバチに縁者びいきはあるのか?

佐藤 俊幸1・廣田 忠雄2・佐々木 謙3・小原 嘉明1

1東京農工大・獣医学科・動物行動学, 2国際基督教大学・理学科・生物, 3動物生命研

概要:ミツバチ(Apis mellifera)は多回交尾であり、コロニーに同父姉妹(血縁度0.75)と異父姉妹(0.25)が共存している。これまで様々な状況で縁者びいきの検出が試みられてきたが、明確な縁者びいきの証拠は得られていない。 演者らは、以前発表したように、縁者びいきは次期女王の生産時に最も顕著にみられるのではないかと考え、DNAフィンガープリントを用いた解析を行ったが、明確な結論は得られなかった。 しかし今回、より適切な統計的手法で再解析した結果、ワーカー群と世話をした女王ブルードの遺伝的類似度は、世話をしなかった組み合わせと比べ有意に高く(p=0.034)、 同じ女王ブルードを世話したワーカー群の遺伝的類似度も、異なる女王ブルードを世話したワーカー間と比べて有意に高いことが分かった(p<0.001)。より洗練された遺伝解析や詳細な行動観察が必要と思われるが、本報は状況によっては縁者びいきがおこることを示唆している。

キーワード:昆虫, 膜翅目, ミツバチ科, ミツバチ目, 蜜蜂, 養育行動, ハミルトン則, 進化, 生態

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