日本動物行動学会, 第21回大会 (2002), 立教大学

変動環境における性特異的な分散の進化:何故モンシロのオスは分散しないのか?

廣田 忠雄

国際基督教大学・理学科・生物

概要:一般的に変動環境や近交弱勢の回避に分散は有効であり、局所的配偶競争が強ければオスが、局所的資源競争が強ければメスが分散すると考えられる。変動環境でr戦略をとるモンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)では、メスが羽化場所から活発に分散 する。一方、オスは羽化場所付近で繰り返し再捕獲されることから、あまり分散しないと考えられる。この際、モンシロチョウのメスが分散前に交尾することが、オスの戦略に強く影響していると考えられる。そこでコンピューターシミュレーションで、変動環境においてオスとメスの分散と、交尾のタイミングがどのように進化するのか調査した。結果、メスは変動環境でより活発に分散するが、羽化場所でも産卵するために分散前に交尾するようになった。また、 メスの分散前の交尾によって局所個体群の実効性比が変動しにくくなるため、環境変動の有無に関わらずオスが殆ど分散しなくなることが分かった。

キーワード:昆虫, 鱗翅目, 蝶, シロチョウ科, 分散行動, 繁殖行動, 進化, 生態

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