日本動物行動学会, 第19回大会 (2000), 滋賀県立大学
1東京農工大・獣医学科・動物行動学, 2国際基督教大学・理学科・生物
概要:社会性昆虫では巣間の敵対性の強さに変異がみられる場合がある。多女王制のヤマヨツボシオオアリ(Camponotus yamaokai)でも巣間の敵対性の強さに変異があるが、この種は巣間の血縁度の違いを識別できないことが分かっている(Sanada et al., 1999)。本研究では、敵対性の強さに関わる要因として、@女王数、Aワーカー数、B幼虫数、C卵数、D生殖虫数、E巣間距離の影響を解析した。その結果、敵対性の強さと女王・幼虫・生殖虫の数や巣間距離との間に有意な相関はないが、ワーカー数が多い巣ほど敵対性が強く、卵数が多い巣ほど敵対性が弱い傾向がみられた。敵対性はコロニー・サイズの増加につれ強くなる一方、より早くより多く産卵する越冬明けの栄養状態が良い巣ほど抑制される可能性が示唆された。
キーワード:昆虫, 膜翅目, 蟻, ヤマアリ亜科, オオアリ属, ウメマツオオアリ亜属, 敵対行動, 多女王性, 進化, 生態