日本動物行動学会, 第19回大会 (2000), 滋賀県立大学
1国際基督教大学・理学科・生物, 2東京農工大・獣医学科・動物行動学
概要:『競争者数と資源量の比が一定』となる理想自由分布(以下IFD)では、『競争者の資源獲得能力が等しい』ことが重要な前提である。仮に、能力の高い競争者が質の良いパッチを寡占したら、資源量が多いにも関わらず競争者は少なくみえ、IFDは成り立たないだろう。だが実際には、競争者の能力にばらつきがあるにも関わらず、IFDが実現されているようにみえる場合が多々ある。Parker & Sutherland (1986) は、競争者の能力がどのパッチでも変わらなければ、各パッチ内の競争者の能力別の構成頻度がランダムになり、競争者数と資源量の比が一定になる確率が高く、IFDと見分けられないと提言した。
我々はこれまでに、モンシロチョウ(Pieris rapae crucivora)のオスが、処女メスの出現頻度に対してIFDを実現していることを示唆した。一方で、オスのメス探し行動に大きな個体変異があり、資源獲得能力が一定でない可能性も示した。今回は、オスの資源獲得能力とメス探しスケジュールの関係を解析し、Parker & Sutherland の仮説と一致しているのか考察する。
キーワード:昆虫, 鱗翅目, 蝶, シロチョウ科, 交尾行動, 繁殖行動, ゲーム理論, 進化, 生態