Transaction of the Lepidopterological Society of Japan, in press
1 国際基督教大学 理学科 生物
2 東京農工大学 獣医学科 動物行動学教室
和文沙録. 鱗翅目では、交尾して間もないオスは未交尾のオスに比べると小さな精包しかメスに渡せない。小さな精包を受け取ったメスは、短時間で再交尾することが多い事実と、複数回交尾したメスは大きな精包を渡したオスの精子を優先するため、交尾して間もないオスは、それほど高い繁殖成績は期待できない。そこで本報では、交尾して間もないオスは精包が元のサイズに戻るまで、繁殖努力を控えるのではないかという仮説を、モンシロチョウで検証した。野外に設置した12 エ 24 エ 2 mのケージ内のキャベツ畑で観察した結果、交尾してから1.8日経過したオス・グループは未交尾のオスよりメス探しに割く時間が有意に短かった。それに対し、交尾してから平均して2.7日・4.3日・5.3日経過しているオス・グループでは、メス探しに割く時間に未交尾のオスと有意な差はみられなかった。この結果は、交尾して間もないオスは繁殖努力を減少させるという仮説を支持する。先行研究では、実験条件下でオスは交尾した日でも再交尾することが報告されているが、非常に狭い場所に入れられている場合であり、繁殖努力を測るのには適当な条件ではなかった。しかし本報の観察条件下では、オスはメスを求めて広いケージ内を飛び回らなくてはならないので、繁殖努力の減少が検出できたのだと思われる。